10月から常勤医師として着任いたしました任 洋輝(にん ひろき)と申します。今まで大学病院を中心に総合診療科として働いておりました。緩和ケア病棟での勤務経験も活かしながら、今後在宅医療の分野で訪問診療医として地域医療に貢献していきたいと思っております。

さて、今日は在宅で出来る癌末期緩和ケアについて少しご紹介したいと思います。

新型コロナの流行で病院での面会制限がある中で、在宅での緩和ケアを希望される方が多くなっています。在宅医療で何ができるのか、何ができないのか、病院との違いは?などについて簡単に説明していきます。

意外かもしれませんが、病院で出来る緩和ケア治療の約8割は在宅で可能です。点滴治療や喀痰吸引、麻薬の持続注射や抗菌薬治療、腹水穿刺などの治療は在宅で行う事ができます。在宅専門クリニックはいろいろな疾患に対応できるように日頃から訪問看護と勉強会を開催したり、様々な医療機器を揃えたりしております。

では病院と在宅医療の一番の違いはなんでしょうか。個人的には一番の違いは「スピード」だと思います。病院であれば医師・看護師が24時間常駐しているので、なにかあればすぐに駆けつけてくれます。在宅医療も医師・看護師は基本的に24時間対応となっていますが、物理的な距離があるためどうしても緊急時の対応には時間がかかってしまいます。そこが病院との比べると弱いところだと思います。ただ、治療内容に関してはほとんどの緩和ケア治療は在宅でも可能ですし、病態に応じて症状経過を予測して薬剤を家に置かせてもらったりと、迅速な対応ができるように事前に準備もしています。ここ最近では在宅専門クリニックや関連事業所が増えてきたことで、対応スピードも速くなっており、在宅医療の全体の質はかなり向上している印象があります。

また、在宅の良いところは住み慣れた環境で療養できることです。もちろん病院の安心感はありますが、在宅での療養で家族と一緒に過ごす時間は何にも変えられない価値があると思います。最近では面会制限がある病院も多く、家族との時間を大切にする方にとっては在宅医療が最適解になったりします。在宅医療であれば家族との面会制限はありませんので、ご家族と一緒に過ごす時間を十分に取ることができますし、愛犬などのペットとも一緒に過ごせたり、好きな物に囲まれたりと、患者さん一人一人に合わせた療養環境を作ることができます。

私たち在宅専門クリニックが存在し、患者さんの治療選択肢が増えることで、病気や体調不良があっても安心して過ごせる社会実現できるのではと思っています。在宅医療はまだまだ馴染みがなく緩和ケアを在宅で受けられるか不安に思う方も多いと思います。当院では在宅医療に関して、無料相談も行っています。電話や来院だけでなく、ご自宅への訪問相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。 次回は在宅での緩和ケアについて、疼痛治療をメインにお話したいと思います。


コラムライター紹介

任 洋輝(にん ひろし)
文京根津クリニック 常勤医
岩手医科大学卒業
東京大学病院初期研修医
がん研有明病院緩和治療科初期研修医
東京医科歯科大学病院総合診療科レジデント
亀田総合病院シニアレジデント
東京医科歯科大学病院総合診療科チーフレジデント

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